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誕生日に寄せて

 ナツの出産予定日は、もともとは3月25日でした。ところが予定日が近づいても一向に生まれる気配もなく、胎盤の機能も落ちてきていたので25日に入院する事になりました。3月は年度末で仕事が忙しかった主人に、とにかく病院まで車で乗せていってもらいましたが、その後主人はすぐに仕事に。

産気づいているわけでもないので、実家の両親も、同居している義母にも、来てもらわないで、とにかくひとりで頑張ろうと思ってはいたのですが。そこの病院の院長先生の方針で入院したからといって、すぐに陣痛促進剤で産ませるというものではなく、なるべく自然に近い陣痛をよぶような処置が行われました。

1日目、午後からメトロ(風船)という処置を受けたにもかかわらず、子宮口が広がったのはそのときだけ、すぐに陣痛も遠のき、お腹の中のナツも下がってこない。2日目、朝から子宮口を広げるための薬を飲むけど、ほとんど陣痛は来ない。正直この辺に来てちょっと凹みました。毎日、まだかまだかと顔を見せる義母にもうんざり。何だか自分が赤ちゃんも産めない駄目な母のような気分に…慣れない入院生活で夜もゆっくり眠れないし、周りには、無事出産を終えた新米お母さんばかり。プレッシャーを嫌というほど感じていました。主人はこの時点でもう帝王切開しか方法はないと思っていたようです。

病室を覗かれた保健士さんに言われました。

「わたしたちの頃は、そんな薬もなかったからとにかく自分で陣痛が来るように、横になっているより、座る。座るより、立っている。立っているより、歩くようにしていたわ。」

この言葉に奮起され、極力歩き回ったり、立ったりうろうろしたり、夜には、洗面台でシャンプーまでしました。そのかいあって、10分間隔の陣痛がきたのですが、そこからは全く進まず、その日は徹夜で陣痛に絶えました。そして一睡もせずに迎えた朝。あの日の気持ちは今でよく覚えています。さあ、今日こそ産まなきゃ。それから陣痛が遠ざかっている間に朝食。そしていよいよ陣痛促進剤の点滴。

分娩室に入ってからは、わずか20分の安産でしたが、産まれてきたナツはへその緒を首に二重に巻いていました。最後は吸引分娩で出してもらいました。偶然にも、入院してからまだ一度も病院には来ていなかったわたしの両親が、出産のほんの10分前に病院に着いていたのです。そして一番にナツを抱いたのはわたしの母でした。ナツが呼んでくれたのかもしれません。

まだ携帯が今ほど普及していなかったので主人には病院からポケベルにかけてもらいました。夕方会社を早退して主人も来てくれました。とにかく子供が好きな人だったので、ナツを抱かせてあげる事ができた事で、大きな責任を果たした、そんな気持でいっぱいでした。

9年前の今頃、まだナツが将来この病気になることなんて夢にも思っていなかったわたし。

本当に人生ってわからない、わからないから面白いのかも…運命って言う言葉だけで片付けてしまえないほどいろいろな事があったこの9年間。でもお母さんはあの日、あなたを産めて本当に本当にうれしかった。

ナツがIDDMを発症して入院していた病棟は産科がすぐ横にあり、新生児を抱いたお母さんたちとよく廊下ですれ違いました。ナースステーションの横には新生児室があり、時間がきたら上げられるブラインドの向こうには、いつも産まれたての赤ちゃんが何人か寝ていました。入院生活にも慣れてわたしとナツは、よく産まれたての赤ちゃんをふたりでじっと眺めていました。

「ナツもこんな時があったのよ」と言いながら、なぜか涙があふれそうでした。この赤ちゃんの中にも、この病気になる子がいるのかな、まあいないだろうな、確率的には。

そんな事を考えながら、赤ちゃん時代のナツの事をなつかしく思い出していました。あの頃は、7歳になったらIDDMになるなんて夢にも思わなかった、もしわかっていたらもっともっとケーキを食べさせてやっていたらよかったのに、いや、いっそケーキの味なんて教えずに大きくしていたかも。

そんな事を考えながらも、発症してから2度目の誕生日をしっかりケーキも食べて迎えることができました。これから先も、合併症もなく元気で誕生日を来年も再来年も、ずっとずっと迎えさせてやりたいと思います。109_0918

【写真】ナツの誕生日が近づくとあちこちの菜の花畑が満開になります。入院する時に車の窓から見た菜の花もとてもきれいでした。ナツの本名は「奈津美」です。菜摘みからとったわけでもないのですが…ちなみに「なっちゃんオレンジ」「なっちゃんアップル」が出たのは、ナツが産まれた数ヵ月後のことでした。

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コメント

ブログを読ませてもらって、何か私の子供たち3人の出産時の時のことを思い出しました。陣痛促進剤の点滴をしながらローカを歩き吸引分娩だった長男、予定日から2日遅れで生まれてきたhono。ナツちゃんとことは何か同じような感じを受けます。
本当にこんな運命に生まれてくるとは思っていなかったと思います。でも、だからこそなっちゃんママの所へ生まれてきてくれたんだよ。
honoも病気になったこと「なんで?」と思うより「10万人に1~2人の確立。神様に選ばれたんだ」と思っています。

投稿: honohono | 2006年3月28日 (火) 22時03分

なっちゃんの産まれるまでの様子を読んでいて、私も子供が生まれた頃の事を思い出していました。
なんだか目を閉じると昨日の事の様なんだけどねぇ~(笑)
あの頃は素直だったんだけどな~今じゃ・・・・ねぇ^m^ププッ

菜の花私大好きな花なのよ♪
菜の花が一面にじゅうたんをひいたように黄色くなる頃が一番好き。奈津美ちゃん。。なっちゃん。。良い名前ですね♪なっちゃんの季節ですね(^_^)v

投稿: なつき | 2006年3月28日 (火) 22時10分

honohonoさんへ♪honoちゃんは、3人目でも予定日より遅かったのね。何だかふたり目や、3人目は早いというイメージがあったので…お母さんのお腹の中の居心地がよほどよかったのかな。

投稿: なっちゃんママ | 2006年3月29日 (水) 15時03分

なつきさんへ♪出産した時のことって、いつになっても鮮明に覚えているよね。あれから9年もたったなんて信じられない。ナツはすごく手のかかる子で、最初の1年ぐらいはほんとに長かった気がする。
菜の花は1本ずつだと、平凡でぱっとしない花なのに、1面に咲くとほんとにきれいよね。1年間で今が1番好きな季節です。でも今年は、いつまでもさ・む・い。春が待ち遠しいな~~

投稿: なっちゃんママ | 2006年3月29日 (水) 15時08分

ナツちゃん、お誕生日おめでとうございます!
なっちゃんママさんも出産記念日おめでとうございます。

私も長男が新4年生ですが、9年前のことを思い出しました。難産で、2日間陣痛促進剤を打ちながら、階段を上ったり降りたり、最後には吸引されて引き出されたのを思い出します。
でも、初めてのお産で感動のあまり、痛みもどこかへすっ飛んでいきましたが・・・

次男は、前回のこともあったので体重を増やさないように気をつけて、8時間程度で生まれました。男の子でしたが、やはり感動は忘れません。生まれて間もなくアトピー性皮膚炎になってしまい、食べ物にも気を使っていたのですが、まさか今こんな運命になってしまうなんてそのときは思ってもいませんでしたからね。
運命という一文字で片付けるのは、ちょっと酷なような気もしますが、10万人に1人という選ばれた子供ですもんね。
一人ひとり大切に育てていきたいなぁって思います。

菜の花のきれいに咲く素敵な季節に生まれてナツちゃんはきっと素敵なレディになることでしょうね!

投稿: nao | 2006年3月31日 (金) 08時56分

naoさんありがとう、レディなんて、今のナツからは想像も出来ない>_<でもいつの日か、好きな人が出来て結婚したいなんていうのでしょうね。次男くんもアトピーだったのですか?ナツも1歳の誕生日あたりが一番ピークでひどいアトピーでした。実家の両親がいい先生を捜してくれて、お陰で3ヶ月程度で治りましたが、皮膚は今でも弱いです。背中なんてかわいそうなぐらい鮫肌です。夏にはあせもに悩まされます。一病息災で、もうこれ以上病気は持たせたくないですよね。

投稿: なっちゃんママ | 2006年3月31日 (金) 09時37分

遅レスですが、
なっちゃん、9歳+4日オメデトウ~☆★☆

読んでいて、私もハルの出産の時を思い出しました。
ハルも予定日より11日遅く生まれました。
出るのがよっぽどイヤだったんだろうな・・・と皆に言われます^^;
明日陣痛が来なかったら、「風船」と言われていたので、
ヤバイと思ったのかな~と思います>_<

それぞれにいろんな思い出があるから、
どんな病気があっても我が子は一番可愛いですよね^^
なっちゃんもお母さんや家族の愛情を受けて、
きっとまた優しいお母さんになるんでしょうね~^^

投稿: はるママ | 2006年3月31日 (金) 17時38分

はるママさんへ☆11日はすごいですね。でもナツも、ほおっておいたら、あと10日ぐらいはお腹にいたのかも…でもナツの場合、とてもきわどいところなので、もう1週間誕生日が遅かったら、今が2年生になってしまっていたのです。わたしもあまり若くなかったので、1年でも早く小学校に行って欲しくてどうしても3月中に産みたかったので、ちょっと焦っていました。「風船」しなくてよかったですよ。すごく痛いです。だから二人目のときは、「風船」だけは止めてって頼みましたもの(*_*)
この病気になって、普通の親子以上に結びつきが強くなったような気がします。だってまだ小学校の低学年のうちから、人生って…命って…みたいな事を普通に会話していますものね。最近では対等に話も出来るので、結構楽しいです。

投稿: なっちゃんママ | 2006年3月31日 (金) 18時38分

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